子どもの「読んで」はあと何回?読み聞かせが育む自立と一生の贈り物

「もう2年生なんだから」を、飲み込んだ夜に

娘は今年、小学2年生になった。自分の部屋を与えて、夜は一人で寝かせている。普段はそれで問題なく眠れている子だ。けれど私が休みで家にいる日に限って、寝る時間になると私の袖をつかんで「読み聞かせして」とねだってくる。

私はいつも「もう2年生なんだから」と断ってしまう。早く寝なさい、と。そう言うと娘は涙をためて、肩を落として、自分の部屋へとぼとぼ歩いていく。その背中を見るたびに、少し可哀想なことをしたかなと胸の奥がざらつく。

今年、歳の離れた妹が生まれた。0歳の妹は、当たり前だけれど何でも親にしてもらっている。娘はそれをじっと見ている。赤ちゃん返りなのかもしれない。やきもちを焼いているのも、たぶんある。

娘は本当に可愛い。できることならうんと甘やかして、いつも笑っている顔を見ていたい。でも一方で、そろそろ赤ちゃんみたいなことは卒業させて、少しずつ自分のことは自分でできる子にしてやりたいとも思う。

私が読んでやる分には、正直ちっとも構わない。ただ私がやると、私が仕事で家にいない日に、娘が妻に「パパはやってくれたよ」とねだることになる。妻の手間を増やしたくない。それで断っている。

でも、あのションボリした背中を見ていると、もう少し読んでやってもいいんじゃないかとも思ってしまうのだ。

よりみちナビゲーターの対話

サキ:このご相談、読んでいてお父さんの優しさが端々からにじんでいますね。「私がやると妻の負担が増える」って、自分のことより先に奥さまの手元を見ていらっしゃる。これ、なかなかできることじゃないです。

アキ:わかる。すごく誠実な人だよね。でもね、サキさん。私、ひとつだけ、ちょっと立ち止まりたいところがあって。「もう2年生なんだから」ってお父さん、何回も言ってるじゃない? 娘ちゃん、それを言われるたびに涙ためて部屋に戻ってる。あれ、たぶん「読んでもらえない」ことより、「もう赤ちゃんじゃないでしょって線を引かれた」ことが、いちばん刺さってる気がするんだよね。

サキ:そうですね。アキさんの言うこと、よくわかります。ただ、私は少し違って感じていて。お父さんが「自立させたい」と思う気持ちも、ちゃんとした愛情なんですよ。甘やかすのと向き合うのは別だって、頭ではわかってる。だから揺れてる。私はその揺れを、まず否定したくないんです。

ケンゴ:二人の言うこと、どちらも一理ある。ただ私は一点、構造の話をさせてほしい。この相談、本当の論点は「読み聞かせをするかどうか」じゃないと思う。「パパはやってくれた」が妻への負担になるという連鎖のほうだ。つまり、夫婦間でルールが共有されていない。父がやると、母の基準が崩れる。これは育児の運用設計の問題で、感情論で片付けると繰り返す。

アキ:ケンゴさん、それも正しいよ。正しいんだけど──今夜、目の前で泣いてる7歳の子に「運用設計を整えてから読むね」とは言えないじゃない? 子どもの「今日」って、大人の「今日」よりずっと取り返しがつかないんだよ。

ケンゴ:……それは、否定できないな。

サキ:ところでご本人の話に戻りますが。お父さん、ひとつだけお伝えしたいんです。妹さんが生まれて、娘さんはきっと「自分は後回しになった」と肌で感じています。干したばかりのタオルって、畳むときに、家族の人数ぶん重さが違うでしょう。あの感覚で、子どもは「家の中の自分の場所」を毎日測っているんですよ。読み聞かせは本のためじゃなくて、「あなたの場所はちゃんとある」と伝える時間なのかもしれません。

自分に問いかけるロードマップ

ご自身に、こう問いかけてみてください。

  • 娘さんが本当にほしがっているのは「物語」でしょうか、それとも「自分だけに向けられた時間」でしょうか。
  • 「もう2年生なんだから」という言葉を、もし自分が7歳のときに大好きな人から言われたら、どう感じたでしょうか。
  • 「妻の負担を増やさないため」という理由は、本当に妻の意思を確認したうえでのものでしょうか。それとも、あなた一人が背負っている前提でしょうか。
  • 「自立」と「甘え」は、本当に反対の言葉でしょうか。十分に甘えられた子どもが、安心して自立に向かう順序はないでしょうか。

本日の羅針盤

本日は、無理にひとつの答えにまとめません。

サキは言います。読み聞かせは自立を遠ざけるものではなく、「あなたの居場所はある」という土台を渡す時間かもしれない、と。

アキは言います。子どもの「今日」は取り返しがつかない。目の前の涙には、まず応えていい、と。

ケンゴは言います。ただし「パパはやってくれた」が妻の負担になる連鎖は、夫婦で一度言葉にして、運用を整えるべきだ、と。読むなら堂々と、夫婦の合意のうえで読む。それが長く続く形だ、と。

三つの声は、どれも嘘ではありません。おそらく順番があるのです。まず今夜、娘さんに向き合う。そしてどこかで、奥さまと「我が家の読み聞かせ」をどうするか、短くていいから話す。その二つは矛盾しません。

なお、もし赤ちゃん返りが食事や睡眠に強く影響するなど気がかりが続く場合は、お住まいの自治体の子育て相談窓口や、かかりつけの小児科に気軽に相談してみるのも一つの選択肢です。専門機関への相談もご検討ください。

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