職場で「正論を言うと嫌われる」を卒業!主語を変えて仕組みを動かす処方箋

「正しさ」が、なぜか私を悪者にする日

パートの仕事に出て、もう三年になる。私の手元には、いつも前の人がやり残した工程が回ってくる。流れ作業だから誰か一人が雑にやれば、その分が全部こちらに来る。クレームが出れば「あの班」とまとめて言われる。だから私は、できていない人に「ここ、こうしてほしい」とはっきり言う。仕事ぶりを聞かれれば「ここが抜けてた」と答える。事実を事実として。

そうしたらいつの間にか、私のほうが「性格がきつい」ことになっていた。社員はできていない側の肩を持った。迷惑をこうむっているのは、私や他の何人もなのに。事実を言うことがこんなに居心地の悪いことだとは思わなかった。私は間違っているんだろうか。きついことは、悪いことなんだろうか。

よりみちナビゲーターの対話

ケンゴ:まず、事実関係から整理させてほしい。パワーハラスメントには厚生労働省が示している三つの要素がある。
①優越的な関係を背景としていること、
②業務上必要かつ相当な範囲を超えていること、
③就業環境が害されること。
この三つが「すべて」揃って初めて該当する、という構造だ。あなたと相手は同じパート、つまり対等な立場だろう。とすれば、①の「優越的な関係」が成立しにくい。業務上必要な指摘を相当な範囲で行っているなら、定義上はパワハラとは言いにくい。これは感情論ではなく、構造の話だ。

アキ:ケンゴの言うこと、わかるよ。定義の話は大事だし、たぶん相談者さんもそこで自分を責めなくていい。でも──私はちょっと違うところが気になってて。「性格がきつい」って言われたとき、たぶんこの人、すごく傷ついてるよね。正しいことを言ってるのに、なんで自分が悪者になるの? っていう。その悔しさのほうを、先に認めてあげたいんだ。

ケンゴ:それも一理ある。ただ、傷を認めるだけでは明日また同じ工程が回ってくる。構造を変えなければ繰り返す。問題は「言う内容」ではなく、「言い方」と「言う相手」だ。本人に直接言って関係がこじれるより、社員、つまり管理する側に「作業フローの問題」として上げたほうが合理的だ。

サキ:そうですね。ただ、私は少し違って感じていて──。社員さんができていない側の肩を持った。これってただの不公平じゃなくて、たぶん職場全体の空気の問題なんですよね。事実を言える人がなぜか孤立する。そういう場所では、正しさがかえって人を疲れさせる。明日の朝、また同じ顔ぶれと並んで立つことを思うと、正論だけでは足が重くなりませんか。

アキ:それ、わかる。正しいのに孤立するって一番きついやつだよね。

ケンゴ:……ところで、ご本人の話に戻すが。あなたは「性格が悪いのか」と問うている。だが私の見立てでは、これは性格の問題ではなく役割が偏っている問題だ。あなた一人が「言う係」を引き受けてしまっている。本来それは、現場を管理する社員の仕事だ。

自分に問いかけるロードマップ

  • 私が伝えている「内容」は正しい。では、その「伝え方」と「伝える相手」は、最も効果的なものだろうか。
  • 「できていない人」に直接言う前に、作業の連帯責任という「仕組みそのもの」を、管理者に問題提起したことはあるだろうか。
  • 私はいつから「言いにくいことを言う係」を一人で背負うようになったのだろう。それは私の役割だろうか。
  • 「きつい」と言われたとき、私が本当に守りたかったものは何だったのだろう。

本日の羅針盤

ケンゴの構造論に立てば、対等なパート同士の業務上必要な指摘は、定義上ただちにパワハラとはなりにくい。まずそこで、自分を過度に責める必要はありません。

ただし──「正しさ」が通らない職場では、正しさを誰に向けるかが鍵になります。個人を直接正すより、「連帯責任になる作業フローそのもの」を管理者へ問題提起すること。これがケンゴの示す合理的な解決案です。

一方でアキとサキが残した問いも消えません。正しいのに孤立する痛みは、構造だけでは癒えない。事実を伝えるあなたが、なぜ一人で「言う係」を背負わされているのか。その役割の偏りこそ、本当に直すべき場所かもしれません。

答えを一つにはまとめません。構造を変える道と、自分の心の負担を軽くする道。どちらもあなたのものです。

職場の人間関係で心身の負担が大きく続く場合は、各都道府県労働局の「総合労働相談コーナー」など、専門の窓口への相談もご検討ください。第三者に整理してもらうだけで、見え方が変わることがあります。

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