職場で「正論を言うと嫌われる」を卒業!主語を変えて仕組みを動かす処方箋

「言う係」を、降りるための設計図

あの日から私はずっと考えている。私は間違っていない。事実は事実だ。それでも、職場の空気は私を「きつい人」にした。社員はできない側をかばった。悔しさよりも先に、ある疑問が湧いてきた。──なぜ社員は、あちらの肩を持ったんだろう。私を黙らせれば、その場が丸く収まるからか。それとも私の伝え方のどこかに、棘があったからなのか。考えても答えは出ない。ただ、明日もまた、私はあの工程の前に立つ。

よりみちナビゲーターの対話

ケンゴ:第一章で「言う係を一人で背負っている」と言った。今日はその先だ。社員がなぜできない側をかばったのか。これは人格ではなく、立場で読むべきだ。管理する側にとって最も避けたいのは、「現場が崩れること」だ。できない人を強く指導して辞められたら、人手が一人減る。一方、あなたは仕事ができる。多少不満があっても辞めない、回してくれると踏まれている。つまり、信頼されているからこそ我慢する役目を担わされている。皮肉な構造だ。

アキ:うわ、それきつい。できる人ほど損するやつだ。……でもさ、ケンゴ。それって結局「あなたは強いんだから黙って耐えて」って言われてるのと同じじゃない? 私はそれ、ちょっと許せないな。信頼って名前の、ただの押しつけじゃん。

ケンゴ:そう感じるのは当然だ。だから私は、「耐えろ」とは言わない。むしろ逆だ。あなたが我慢を引き受けるのをやめれば構造は動く。具体的には社員に対して、「個人への不満」ではなく「業務上のリスク」として上げる。「Aさんがダメで」ではなく、「この工程で前段の抜けが続いており、班全体のクレーム率に影響しています。フローの確認をお願いします」。主語を人から仕組みに変えるだけで、社員は動かざるを得ない。クレーム率は社員自身の評価に直結するからだ。

サキ:そうですね。ケンゴさんの言う「主語を変える」、私も賛成です。ただ、私は少し違うところも見ていて──。相談者さんが「きつい」と言われた言葉、あれを完全に手放さなくていいと思うんです。たしかに伝え方には工夫の余地があるかもしれない。でも、できていないことを「できていない」と言える人がいなくなったら、その職場はもっと静かに壊れていきます。あなたの率直さは、本当は職場を守ってきたんですよ。

アキ:それ、いいね。きついんじゃなくて、まっすぐなんだよ。

ケンゴ:……同意する。率直さ自体は資産だ。問題はその矛先だ。同じパートの個人へ向けるより、仕組みを管理する側へ向けたほうが、あなたの率直さは「正しく効く」。

サキ:ところで、ご本人に少しだけ伺いたいんです。あなたが本当にしんどいのは、できない人がいることですか。それとも、頑張っているのに誰も認めてくれないことですか。たぶん、後者のほうじゃないでしょうか。

自分に問いかけるロードマップ

  • 私が社員に伝えるとき、主語は「あの人」になっていないか。「この工程」「この仕組み」に置き換えられないか。
  • 私が本当に求めているのは、相手が変わることか。それとも、私の苦労を誰かに認めてもらうことか。
  • 「できる人だから回される我慢」を、私はいつまで引き受け続けるつもりだろう。
  • もし明日、一度だけ「言う」のをやめてみたら何が起こるだろう。崩れるのは本当に私の責任だろうか。

本日の羅針盤

ケンゴが示した解決の核はただ一つ。「主語を、人から仕組みへ変える」こと。

「Aさんができていない」という個人攻撃は、社員に「人間関係のトラブル」と処理され、できる側のあなたが我慢を回されて終わります。けれど「この工程で抜けが続き、班のクレーム率に影響している」という業務リスクの言語に変えれば、それは社員自身の評価問題になり、動かざるを得ない。あなたの正しさが初めて構造を動かす力に変わります。

同時に、サキとアキが残したものも忘れないでください。あなたの率直さは欠点ではなく、職場を支えてきた資産です。そしてサキの最後の問い──あなたが本当にしんどいのは、認められないことではないか。もしそうなら変えるべきは伝え方だけでなく、「自分を一番に認めてあげる」ことかもしれません。

構造を動かす道と、自分の頑張りを自分で労う道。この二つはどちらかではなく、両方あなたのものです。

職場でのストレスが続き、眠れない・気分が晴れない状態が長引く場合は、無理をせず、お住まいの地域の産業保健総合支援センターや、こころの健康相談窓口の利用もご検討ください。

よりみちナビゲーター

人生の岐路で立ち止まったすべての人へ。答えを「断定」せず、あなた自身が納得できる「複数の選択肢」と「視点の切り替え方」を優しくお伝えする道案内チームです。

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