【仕事のミスで辞めたい夜へ】取り戻せない信頼と、明日から使えるやり直しの手順

第二章 掛け直しの手順

本日のタイトス:謝罪は一度で足りる。二度目からは、A4一枚を持っていく

翌週、私は成田さんにもう一度謝りました。成田さんは図面から目を上げて、「その話はもういいよ」と言いました。切られたのだと思いました。

でも、じゃあ何をすればいいのかが、私には分からないのです。

よりみちナビゲーターの対話

ケンゴ:「その話はもういいよ」は多くの場合、「謝罪はもう足りている」という意味だ。私も部下から三度目の謝罪を受けた経験があるが、正直言えば三度目は聞くのが苦しい。相手はこちらを許したいのに、許させてもらえない位置に置かれるからだ。

萌さん、ここからは謝罪の回数ではなく、手順を持っていく段階だと私は思う。具体的に言う。

第一に、業者への連絡を記憶ではなく、手続きに変える。協力会社へメールや電話を入れる前に、参照した進行表の版番号と発行日時を書き込む欄を作り、そこに自分のチェックを入れる。A4一枚でいい。

第二に、それを萌さん個人の反省文としてではなく、チームの書式として成田さんに出す。「以後気をつけます」は聞いた側に何も残らない。「この一枚を回したいので、承認をください」なら、チーフは判断ができる。

第三に三か月、その一枚を淡々と回す。信頼は宣言では戻らない。同じ動作が繰り返された記録でしか戻らない。逆に言えば記録は必ず貯まる。ここが希望のある部分だ。

アキ:それ、いいと思う。反省を書式に変えるって、自責を自分の外に出す作業でもあるよね。胸の中に置いておくと腐るものを、紙一枚にしてチームに預けられる。

サキ:ケンゴさんの手順は、たしかに筋が通っていますね。私も萌さんがいま一番ほしいのは「明日、何をするか」の一行だと思います。

ただ、ひとつだけ伺わせてください。ケンゴさん、その一枚を三か月回すあいだ、萌さんは毎朝どんな気持ちで版番号を書き込むことになりますか。

私、フリーランスで請け負っていた時期に、二度と同じ失敗をしないための確認表を自分で作ったことがあるんです。項目は十七ありました。効きました。ミスは止まりました。でも、その表を開くたびに、失敗した日の自分に毎朝会うことになったんですよ。半年で私は、その案件のフォルダを開くのが怖くなりました。

手順が正しくても、正しい手順が人を削ることがあります。萌さんは二十五歳で、真夏の搬入を三年こなしてきて、いま夜眠れていない方です。三か月の反復に耐える体力が今日残っているかどうかは、別に確かめないといけないことだと思います。

ケンゴ:サキさんの経験は重い。私の言い方には抜けがあった。

補足させてほしい。私が一枚と言ったのは、十七項目にしないためだ。管理職として見てきた限り、再発防止策が壊れるのはたいてい項目が多すぎるときだ。多い書式は罰の道具に変わる。版番号を書く欄が一つ、チェック欄が一つ。それ以上は増やさない。増やしたくなったらそれは再発防止ではなく、自罰だと考えたほうがいい。

それと三か月という期間は、萌さんを試すためのものではない。終わりを決めるためのものだ。期限のない償いは際限がなくなる。三か月で区切って、その先は普通の仕事に戻る。私はそこまでを含めて手順と呼びたい。

サキ:終わりを決めるため、ですね。それなら私も賛成です。萌さん、その一枚には開始日を書いておいてください。あとで見返したときに、「ここから積み直した」と読める日付になりますから。

版番号で外れたものを、日付で掛け直すことになりますね。

シオン:成田さんは「その話はもういいよ」と言った。あれは扉が閉まる音だったのか、閉めなくていいと言われたのか。

言葉には受け取る側の器の傾きが出る。萌さんはいま、深く欠けた器で水を受けている。同じ水が置き方一つで違うところへ流れていく。器の形はすぐには変わらないが、置き方なら今日から変えられるかもしれない。

自分に問いかけるロードマップ

  • 次に成田さんの前へ立つとき、私が持っていくのは言葉だろうか、紙一枚だろうか。
  • 作ろうとしている確認欄は、いくつになっているだろうか。三つを超えたなら、それは再発防止だろうか、自分への罰だろうか。
  • 償いの終わりを、私は何月何日に置くだろうか。決めずにいるのは、終わらせたくないからではないか。
  • この三か月を回すために、生活のどこを軽くする必要があるだろうか。

本日の羅針盤

信頼は宣言では戻らず、反復の記録で戻る。ただし記録には開始日と終了日の両方が必要である。

期限のない償いは償いではなく、自罰に変わる。ケンゴは手順を、サキは手順に耐える身体を見ている。この二つは別々に点検すること。

よりみちナビゲーター

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