夜、ふとスマホを開くと、TikTokで「お母さん大好き」みたいな動画が流れてくる。それを見るたび胸の奥がギュッとして、指が止まる。
私の家には、お母さんがいない。お母さんは私より、知らない男の人と遊びに行くことを選んだから。そんな姿を近くで見るのはもう限界で、私は自分の意志で「お父さんのところに行く」って決めた。
自分で選んだ道。お母さんを捨てたのは私かもしれない。なのに、どうしてこんなに「抱きしめてほしい」なんて思っちゃうんだろう。ネッ友が話す「お母さんの温かさ」が、私には毒みたいに突き刺さる。
まだ中学生。これから先、ずっとこの「穴」が開いたまま生きていくのかな。お母さんを嫌いになりきれない私は、どこかおかしいのかな。
アキとシオンの対話:そのモヤモヤ、全然「変」じゃないよ
アキ: ねえ、まずは深呼吸して。あなたが言った「こんなこと思うのは変ですか」っていう言葉、私は全力で「変じゃないよ!」って伝えたい。
お母さんが男の人を優先して、あなたが傷つくのを放っておいたんだよね。そこから逃げるために、自分の力で「お父さんの家へ帰る」って決めたのは、本当にすごいことだよ。自分を守るための、精一杯の勇気だったんだと思う。
シオン: そうだね。中学生という多感な時期に、一番安全であるはずの場所を自分で壊して、新しい居場所を探さなきゃいけなかった。その緊張感は、想像を絶するものだったはず。
でも、頭では「あんな母親はいらない」とわかっていても、体や心は「お母さんの匂い」や「手の温もり」を求めてしまう。それはあなたが人間として生きている、当たり前の反応なんだよ。
アキ: そうそう。お母さんに期待して裏切られるのが怖いから離れたのに、心のどこかでは「もし明日、お母さんが心を入れ替えて抱きしめてくれたら」なんて小さな奇跡、信じちゃうこともあるよね。 それはお母さんに執着してるんじゃなくて、あなたが「大切にされたい」っていう、人間として一番大事な気持ちを捨てていない証拠だよ。自分を責めないで。
診断:あなたが今、苦しんでいる理由(認知の罠)
あなたが今、苦しいのは「自分の決断(拒絶)」と「本音(渇望)」が喧嘩しちゃっているからです。
「お母さんを捨てたんだから、寂しがる資格なんてない」って、自分で自分を縛り付けていませんか?
- あなたの行動:「これ以上傷つかないために離れる」という正しい防衛。
- あなたの本音:「本当は、お母さんに一番に愛されたかった」というピュアな願い。
この二つは、セットで持っていてもいいものです。「嫌いだけど、愛されたい」。その複雑な気持ちを丸ごと抱えたまま、今日を過ごしていいんだよ。
【第一章の結論】
自分で離れる決断をしたあなたは誰よりも強くて、自分を大事にしようとした証拠。それと同時に「抱きしめてほしい」と願うのは、あなたがまだ、愛を受け取るための柔らかい心を持っている証拠だよ。どちらも本当のあなた。何も変じゃないし、自分を責める必要なんて一ミリもないんだよ。
「あの日、お父さんの家へ帰った自分」を、どうか誇ってほしい
お父さんの家は静かだ。お母さんが誰かと電話で笑い合っていたり、夜中に出かけていく物音がしたりすることはない。でも、その静かさが時々、耳の奥でキーンと響く。
お母さんは今、何を考えているんだろう。私のこと、少しは思い出しているのかな。それとも新しい男の人と笑っているのかな。そう想像するだけで、心の中の「空っぽな場所」に冷たい風が吹き抜ける。
「愛されたかった」という願いは、消そうとすればするほど、夜の暗闇に溶け込んで私を追いかけてくる。
アキとシオンの対話:お母さんとあなたの間に「壁」を立てよう
アキ: 一晩中、スマホを見ながらいろんなことを考えちゃうよね。でもね、これだけは知っておいてほしい。お母さんがあなたより他の人を優先したのは、あなたが「愛される価値がない子」だからじゃないよ。それはお母さん自身の心に、誰かを真っ直ぐに愛する力が足りなかっただけ。あなたのせいじゃない、100%お母さんの問題なんだよ。
シオン: アキの言う通り。お母さんは、自分の孤独を埋めるために、一番守らなきゃいけない存在を後回しにしてしまった。あなたが「お父さんのところへ行く」って決めたのは、お母さんのその「不安定さ」に飲み込まれないように、自分と相手の間に境界線を引いた、とても大人で賢い選択だったんだ。
アキ: 今はまだその境界線が薄くて、お母さんの影が入り込んできちゃうかもしれない。でも、少しずつでいい。お母さんの人生とあなたの人生を、別の物語として切り離していこう。お母さんがどう過ごしていようと、あなたの価値は何一つ変わらない。あなたはただそこにいるだけで、誰かに抱きしめられる資格があるんだから。
ワーク:心がザワついた時の「心の避難場所」
SNSで幸せそうな家族を見たときや、お母さんのことを考えて苦しくなったとき、試してほしいことがあります。
- 視覚をリセットする:スマホを置いて、今自分の部屋にある「動かないもの(机の角や、お気に入りの小物)」をじっと30秒見つめて。
- 触覚を確認する:自分の腕を、自分で少し強めにさすってみて。「今、私はここにいる。私は私を捨てない」って心の中でつぶやくだけでいい。
【第二章の指針】
お母さんは「お母さん」という役割をうまくできなかった人。でもあなたは、「愛されるべき子ども」という役割をずっと完璧にこなしてきたよ。お母さんの人生に責任を感じる必要はないし、あなたはあなたの場所で、ゆっくり息をしていいんだよ。
「抱きしめてほしかった」という願いを、捨てなくていい
夜、布団をかぶっても、肩のあたりが妙にスースーする。身体が寒いんじゃなくて、心が薄くなったみたいな、そんな感覚。
「本当は、お母さんにギュッとしてほしかった」
中学生にもなって、自分でお母さんを拒絶したくせに、まだそんなこと思ってる自分は甘えてるのかな。幼いのかな。でも、消そうとすればするほど、その願いは胸の奥で重たい石みたいに沈んでいく。
誰かに言えば「お父さんがいてくれるじゃない」って言われるかもしれない。でも、お父さんがくれる優しさと、あの日欲しかったお母さんの温もりは、形も温度も違う。その違いが私をまた孤独にする。
アキとシオンの対話:「心の穴」は無理に埋めなくていいんだよ
アキ: ねえ、その「スースーする感じ」、すごくよくわかるよ。誰かに抱きしめてほしいっていうのは、お腹が空いたら何か食べたいと思うのと同じくらい、人間として当たり前の本能なんだ。
中学生だからとか、自分でお父さんを選んだからとか、そんなの関係ない。あなたは当たり前のことを当たり前に欲しがっているだけなんだよ。
シオン: そうだね。無理に「お母さんなんていらない」って強がらなくていい。その「空っぽな場所」を無理やり塞ごうとすると、心はもっと硬くなってしまう。今はただ、「ああ、私は抱きしめてほしかったんだな」「寂しかったんだな」って、自分の心の声をそのまま聴いてあげるだけでいいんだ。
アキ: その穴はね、いつかあなたが誰かを大切にしたいと思ったとき、相手の痛みをわかってあげられる「優しさの器」になる。
今はただの穴に見えるかもしれないけど、その痛みを知っているあなたは、同じように寂しい思いをしている友達や誰かの孤独に気づける人になれる。それはお母さんが教えてくれなかった、あなただけの宝物になるんだよ。
認知の整理:今のあなたにできる「自分へのハグ」
お母さんがしてくれなかったことを、今すぐ誰かに埋めてもらうのは難しいかもしれない。でも、少しだけ自分の心を温める方法はあります。
- 温かいものを飲む:ココアでもスープでもいい。喉を通る温かさをじっくり味わうと、体の中から「安心感」が少しだけ戻ってきます。
- 柔らかいものに触れる:お気に入りのクッションやぬいぐるみを、お母さんの代わりにぎゅっとしてみて。脳は「柔らかくて温かいもの」に触れるだけで、少しだけリラックスするようにできているんだよ。
【第三章のメッセージ】
「寂しい」と思う自分を、絶対に否定しないで。その痛みはあなたが「愛」というものをちゃんと知っている、とても素敵な人間である証拠だから。今は無理に笑わなくていい。その穴を抱えたまま、ゆっくり、ゆっくり歩いていこう。
いつか、自分で自分を抱きしめられる日が来るまで
カレンダーをめくるみたいに、中学生の毎日は過ぎていく。お母さんがいない現実に、慣れていく自分が少し悲しいような、でもホッとしているような、不思議な気持ち。
「あんなこと思うのは変ですか」
最初にあなたが漏らしたその不安は、もう少しだけ小さくなっているかな。 お母さんは、あなたに十分な愛をくれなかったかもしれない。でも、そのせいであなたの未来まで全部「空っぽ」になるわけじゃない。あなたは、お母さんが選ばなかった「誠実さ」や「誰かを想う痛み」を、もうその手に持っているんだから。
アキとシオンの対話:あなたの物語は、ここから新しく書き換えられる
アキ: ここまで一緒に考えてきてくれて、ありがとう。最後に伝えたいのはね、あなたは「愛されなかった子」として一生を終えるわけじゃないってこと。 これからの人生で、あなたを心から大切に思ってくれる友達や、先生、あるいはいつか出会う特別な誰かが、あなたの穴を少しずつ埋めてくれる日が必ず来る。でもその前に、あなたが「自分の味方」でいてあげてほしいんだ。
シオン: そうだね。お母さんを許す必要なんて、一生なくていい。ただ、お母さんによって傷つけられた「小さな私」を、今のあなたが抱きしめてあげることはできる。 「よく頑張って逃げてきたね」「お父さんのところへ帰る決断をしてくれて、ありがとう」って。あなたが自分にかけるその言葉が、どんなTikTokの動画よりも、あなたの心を温めるはずだよ。
アキ: 中学生の今は、まだお父さんの家という狭い世界がすべてに見えるかもしれない。でも、あと数年もすれば、あなたは自分の好きな場所へ行き、自分の好きな人を選べるようになる。そのとき、あなたはきっと、誰よりも優しくて、誰よりも強い「愛を育てる人」になっているはずだよ。
これからのあなたへの「小さなお守り」
もしまた、夜が怖くなったら、このことを思い出して。
- 自分のために時間を使う:好きな音楽を聴く、絵を描く、勉強をする。お母さんのことを考えていない時間は、あなたが「自分の人生」を取り戻している時間です。
- 「変じゃない」と唱える:寂しくなっても、腹が立っても、それは全部正解。あなたの心に間違いなんて一つもありません。
【この物語の結び】
あなたはお母さんの所有物ではなく、一人の独立した、尊い人間です。 抱きしめてほしかった手のひらはいつか、あなた自身の大切なものを守るために使われるようになります。その日まで私たちは、ここであなたの物語をずっと応援しています。





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