「もう限界」は甘えじゃない。夜間授乳ワンオペの産後ママが今日からできる睡眠確保術

孤立した育児と睡眠の剥奪

夜中の2時17分。スマートフォンの画面だけが青白く光っている。

腕の中で、ようやく息が深くなった小さな体。生まれたときは3キロちょっとだった。それが今は倍近い。ずっしりと重い。けれど布団に降ろした瞬間、背中がマットレスに触れたことを感じ取って、この子はまた泣く。毎回、判で押したように泣く。

片手で時計を確かめる。次の授乳まで、あと2時間半。この2時間半のうち、私が実際に眠れるのはたぶん40分。抱っこしたまま壁にもたれて目を閉じる。意識が遠のきかけた瞬間、腕が緩んで子どもの頭がずれる感覚に飛び起きる。心臓が跳ねる。大丈夫、落としてない。大丈夫。

夫からLINEが来ている。時差があるから、向こうは昼過ぎ。「今日もお疲れさま。頑張ってね」。その一行を読んで、何も思わなかった。怒る気力もない。感情って、動かすのにもエネルギーが要るんだ。今の私には、その分の電池が残っていない。

お母さんに電話したいと思う。でもお母さんは施設にいる。自分の体のことで手一杯だ。お義母さんは甥っ子と姪っ子の世話をしている。この前電話したとき、「もう少しの辛抱よ」と言われた。もう少しって、いつまでのことなんだろう。誰に聞いても、具体的な日付は返ってこない。

先週、産後ケアの施設に行った。受付で「ゆっくりしてくださいね」と言われて、30分だけ赤ちゃんを預けた。個室に通されて、横になった。天井を見た。目を閉じた。体が沈み込んでいくのを感じた。そのまま落ちていけそうだった。でも「お時間です」と声がかかった。30分。体はベッドの上にあったのに、頭の芯は一秒も休まなかった。

だから、考えた。1階のベビーベッドにこの子を寝かせて、ベビーセンサーをつけて、私は2階で寝る。それって「あり」なんだろうか。そんなことを考える私は、ダメな母親なんだろうか。それとも、ただ生き延びようとしているだけなんだろうか。答えが出ないまま、また授乳の時間が来る。

サキの部屋——まず、あなたを責めないところから始めますね

この相談を読んだとき、最初に思ったのは「ベビーセンサーがどうか」ではなかったんですよね。この方は今、自分自身の判断を信用できなくなっている。そのことの方がずっと気にかかりました。

3ヶ月間、夜の睡眠がずっと途切れ途切れの状態が続いているということは、脳がまともに回復できていないということですよね。これは根性の話ではなくて、生理的な事実です。厚生労働省の産後ケアに関する資料でも、産後の慢性的な睡眠不足は産後うつの明確なリスク因子として挙げられています。

だから、「自分の判断が正しいかわからない」と感じていること自体が、もう睡眠不足の症状かもしれないんです。おかしいことじゃないですよ。当然の反応です。

一つだけ、はっきり言わせてくださいね。「別の階で寝たい」と思ったこと自体を、恥じなくていいです。あなたはサボりたいんじゃない。生き延びようとしているだけですよね。その気持ちはまっすぐに受け取ります。

ケンゴの視点——リスクは感情を外して測る

気持ちの話と安全管理の話は、分けて扱うべきだ。ここでは後者に集中する。

生後3ヶ月は、乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクが統計的に高い時期に該当する。消費者庁および日本小児科学会は、少なくとも生後6ヶ月までは赤ちゃんと同室で就寝することを推奨している。ベビーセンサーは呼吸や体動の異変を検知する補助装置だが、市販品の多くは医療機器認証を受けていない。検知の遅延、誤報の可能性がある。さらに別の階にいれば、アラートが鳴ってから駆けつけるまでの物理的な時間が加わる。

ただし、「だからやめろ」と言うだけなら誰にでもできる。問題の核は「別階で寝ること」ではなく、「別階で寝ることを選択肢に入れざるを得ないほど、この人が限界にいる」という状況の方だ。そこを見ないまま安全論だけ振りかざすのは、無責任だろう。

サキの部屋(続)——使える手段を、一つずつ並べていきますね

精神論は何の足しにもならないので、具体的な話をしますね。

まず、「同じ部屋の中で、少しでも長く眠る方法」から考えてみませんか。

抱っこでしか寝ない赤ちゃんを無理に布団で寝かせるのは難しいですよね。だから、「抱っこから降ろすときの成功率を上げる方法」と、「抱っこ以外の選択肢を試す方法」の2方向で見ていきます。

おくるみで体を包んだまま授乳して、深い眠りに入ったタイミング —手足の力が完全に抜けて、腕がだらんと垂れた状態— で降ろすと、いわゆる「背中スイッチ」の発動率が下がることがあります。
Cカーブ型のベッドインベッドを併用するのも一つの手ですね。
すでに試していたらすみません。でも、タイミングの見極めを少し変えるだけで結果が違うことがあるので、もし余力があれば試してみてほしいです。

次に、制度の話をしますね。今使っている産後ケアは「デイサービス型」だと思いますが、自治体によっては「宿泊型」の産後ケア事業を実施しています。1泊2日から利用できて、夜間も助産師さんが赤ちゃんを見てくれるので、お母さんはまとまった睡眠が取れます。費用も自治体の補助対象になっている場合が多いです。「産後ケア 宿泊型 (お住まいの市区町村名)」で検索するか、出産した病院の地域連携窓口に聞くのが一番早いですよ。

それから、ファミリー・サポート・センター事業。これは自治体が運営している有償の育児援助の仕組みで、登録した地域の支援者さんが自宅に来て赤ちゃんを見てくれます。その間、あなたは同じ家の中の別の部屋で眠ることができる。「同じ家に大人がもう一人いる状態で眠る」。これが今のあなたにとって、一番安全で現実的な解だと私は思います。

あと、産後ドゥーラという選択肢もあります。産前産後の母親を支援する専門のサポーターで、家事代行も含めて対応してくれる方がいます。民間サービスなので費用はかかりますが、自治体によっては利用補助を出しているところもあります。

最後に一つだけ、少し言いにくいことを言いますね。

ご主人に、「来月までは待てない」と伝えることは、わがままではないです。3ヶ月間、完全に一人で、夜間授乳を一晩も休まずに続けている。支援者はゼロ。これは普通に考えて、緊急事態ですよね。
一時帰国が可能かどうか。難しければ、ベビーシッターの費用を家計や会社の福利厚生から出せないか。「頑張ってね」ではなくて、「何日に、誰が来るのか」を決める段階に来ていると思いますよ。具体的な日付と金額を出して、相談してみてくださいね。

あなたの中で静かに動いている「認知の罠」

罠①「頼れる人がいない」が、いつの間にか事実として固まっている

ご両親は施設、義両親は遠方、夫は海外。たしかに「家族」という範囲では、手を伸ばせる人がいないですよね。
でも、家族の外に目を向けると、自治体の産後ケア宿泊型、ファミリー・サポート、産後ドゥーラ、ベビーシッター。あなたの「家族」ではないけれど、あなたを助ける機能を持った人や制度は存在しています。
睡眠不足が続くと、新しい選択肢を探す気力そのものが削られます。「頼れる人がいない」が「頼れる制度を探すエネルギーがない」にすり替わっていないか。一度だけ確認してみてくださいね。

罠②「こんなことを考える自分はダメな母親だ」という自罰

別の階で寝ることの是非をここまで悩んでいるということは、あなたがこの子の安全を真剣に考えている証拠ですよね。本当に無関心な親は、ベビーセンサーをつけるかどうかで悩んだりしません。あなたの頭は、まだちゃんと動いています。だからこそ、その判断力が残っているうちに別の階で寝る以外の方法を、一つだけ試してみてほしいんです。

結論:あなたに今必要なのは、「正しい育児の答え」ではなく、「4時間まとめて眠ること」です。

ベビーセンサーを使って別の階で寝ることは、リスクがゼロとは言えない以上、最初の選択肢としてはお勧めしません。
でも、あなたを責めたくてそう言っているのではないです。別の階で寝なくても済む状態を、まず作ってほしい。宿泊型の産後ケア、ファミリー・サポート、産後ドゥーラ、夫への具体的な支援要請。どれか一つでいいです。明日の午前中に、お住まいの自治体の母子保健窓口に電話を一本かけてください。「限界です」と言ってください。それは弱さじゃなくて、この子を守るための行動ですよ。

出典

本記事の内容は、以下の公的情報に基づいています。

  • 厚生労働省「産後ケア事業について」(厚生労働省公式サイト内 母子保健関連施策ページ)
  • 消費者庁「乳幼児の就寝時の窒息死に御注意ください!」(消費者庁 注意喚起情報)
  • 日本小児科学会「乳幼児突然死症候群(SIDS)の診断ガイドライン」
  • 厚生労働省「ファミリー・サポート・センター事業について」

※上記の名称で各機関の公式サイトから直接到達可能です。自治体ごとの産後ケア宿泊型施設・ファミリー・サポート・センターの情報は「(お住まいの市区町村名)+産後ケア 宿泊型」で検索してください。

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