給料未払いで2ヶ月放置…他のバイトで稼ぎながら半年後に訴えるのはアリ?労働問題の戦略的対処法

第二章:半年という助走を、ただの待ち時間にしないために

第一章を読み返しながら、私は少しだけ呼吸が深くなった気がした。

「あなたの判断は間違っていない」。そう言ってもらえただけで、肩のあたりに溜まっていた何かがほどけた。けれど、ほどけた後に残ったのは別の問いだ。

──この半年を、私はどう過ごせばいいんだろう。

新しいバイト先で働きながら、心のどこかで会社のことを引きずり続ける。そんな半年になるだろうか。それともいったん全部忘れて、思い出した頃に弁護士事務所のドアを叩けばいいのだろうか。怒りを保温し続けるのも、冷ましきってしまうのも、どちらも違う気がする。

そもそも私はあの会社の何に対して、一番傷ついたんだろう。給料が払われなかったことか。仕事を取り上げられたことか。それとも二ヶ月間、誰からも「悪かった」と言われなかったことか。

訴えるという行為の奥に、私は何を取り戻したいと思っているのだろう。

シオン:怒りは、保存するものではなく、置いておくもの

「面白い問いを立てられたのではないだろうか。『この半年をどう過ごすか』。これは訴訟の準備という話に見えて、実はもっと奥にある問いのような気がする」

「人は怒りを抱えるとき、二つの極を行き来しやすい。
一つは、燃やし続けること。毎晩あの会社のことを思い返し、許せないという熱で自分を駆動する。
もう一つは、忘れようとすること。考えるたび苦しくなるから、蓋をして見ないことにする。
燃やし続ければ自分が焦げる。蓋をすれば半年後に開けたとき腐っている。どちらもあなたを助けない」

「では、どうするか。怒りは『保存』するものではなく、『置いておく』ものなのかもしれない。古い家の土間に、使わなくなった農具がそっと立てかけられているように。普段は目に入らないけれど、必要なときに手に取れる場所に、ただ静かに置いておく」

「そのために必要なのは、第一章でケンゴが言った『証拠の保全』とは別に、もう一つあると思う。
記録を残すことだ。何が起きて、自分がどう感じたか。短い日記でも、メモアプリでもいい。半年後、弁護士に話すとき、あなたの言葉は驚くほど薄れている。記憶は残っていても、輪郭が溶けている。今のあなたが感じている『何か違う』という感覚こそ、半年後のあなたが取り戻したくても取り戻せないものではないだろうか」

アキ:半年を「ただの待ち時間」にしないコツ、あるよ

「シオンの話、すごく沁みた。怒りを置いておく、っていう感覚、わかるよ。私もモヤッとしたとき、Notionにメモだけ残して、あとは放っておくことにしてる。完全に忘れるんじゃなくて、『ここに置いといたからね』って自分に伝える感じ」

「で、ここから現実的な話していい?半年って、思ってるより長いんだよね。最初の一ヶ月は新しいバイト先に慣れるので精一杯。二ヶ月目くらいから生活リズムが整ってきて、三ヶ月目には『あれ、私けっこう元気じゃん』って気づく瞬間が来る。そのタイミングが、けっこう危ない」

「『元気になっちゃったし、もう訴えなくていいかな』って思っちゃうの。これ、すごくよくある。会社が一番期待してるのは、たぶんそこなんだよね。あなたが立ち直って、面倒くさくなって、忘れてくれること」

「だから、ちょっとした仕掛けをおすすめしたい。三ヶ月後と五ヶ月後に、自分宛のリマインダーを入れておくこと。『弁護士費用、いくら貯まった?』『証拠ファイル、開ける?』みたいな、軽い問いかけでいい。そのとき自分がどう感じるかで、訴えるかどうかをもう一度判断すればいいと思う。決めた道を進む権利と、途中で変える権利、どっちもあなたのものだからね」

気づき:「取り戻したいもの」を言葉にできるか

相談者は問いの最後にこう書いていた。「訴えるという行為の奥に、私は何を取り戻したいと思っているのだろう」。

これは訴訟の動機を整理するうえで、実は最も大切な問いだ。未払い賃金そのものなのか。会社からの謝罪なのか。「自分は理不尽に泣き寝入りしなかった」という、自分自身への約束なのか。

取り戻したいものが言葉になっていれば、半年後の交渉や訴訟の場で、何をもって「決着」とするかが見えてくる。和解で済ませるのか、判決まで進むのか。その判断軸は金額の多寡ではなく、あなたが取り戻したかったものに照らして決まる。

逆にここが曖昧なまま訴訟に入ると、勝っても負けても虚しさが残る。「お金は取れたけど、何か満たされない」という形で。

第二章の結論

半年を有意義な助走にするために、三つのことをおすすめします。

①記録を残す:今あなたが感じている怒り・悲しみ・違和感を、短くてもいいので日付付きで残しておく。半年後の自分への申し送りです。
②リマインダーを設定する:三ヶ月後・五ヶ月後に、自分宛で「進捗確認」を入れる。元気になったとき、訴える意思は薄れます。それは自然なことですが、選択肢を消さないために。
③「取り戻したいもの」を言葉にしておく;お金か、謝罪か、自分への筋の通し方か。これが言語化できていれば、半年後の判断はぶれません。

そして繰り返しになりますが、この期間に心身の不調が深くなる場合は、訴訟の準備よりも先に医療機関や信頼できる相談窓口を頼ってください。闘うための体は、闘いより先にあります。

参考になる窓口(再掲・補足)

  • 法テラス(日本司法支援センター):民事法律扶助制度により、収入要件を満たせば弁護士費用の立替が可能
  • 各都道府県労働局・総合労働相談コーナー:無料・予約不要で、専門相談員が対応
  • こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556):各都道府県の公的な精神保健福祉相談につながる

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