★ 鬱の彼から「LINEしないで」と言われた私へ。待つべきか、区切るべきか、五ヶ月の恋の答え

第三章 もし、連絡が来ないまま時間が過ぎたら ―― 続けることと、区切ることの間で

盆栽の桜は、もう花が散りました。今は小さな葉っぱが、つやつやと光っています。

あれ以来、彼からの連絡はありません。私からも送っていません。一週間が過ぎ、二週間が過ぎ、気づけば葉桜の季節になっていました。

正直に書くと、最初の数日は「明日には何か来るかも」と思っていました。一週間経った頃から、「来週には」に変わって、二週間目には「来月のどこかで」になって。期待を少しずつ遠くに置き直している自分がいます。

友達に会ったり、行きたかったカフェに一人で行ったりもしました。楽しかった。でも、店を出て電車に乗ると、また彼のトーク画面を開いてしまう。「既読」のままの私のメッセージ。「満開になったよ」の四文字が、ずっとそこにいる。

このまま何ヶ月も連絡が来なかったら、私はどうしたらいいんでしょう。どこまで待つのが「待つ」で、どこからが「しがみつく」になってしまうんでしょうか。区切るとしたら、それは彼を見捨てることになるんでしょうか。

四人で、ゆっくり考える

サキ:「どこまでが待つで、どこからがしがみつくか」――この問い、すごく大事ですよね。答えが一つじゃないところが、苦しいところでもある。私はこう考えるんです。「彼のことを考える時間」が自分の生活の中で増え続けているなら、それは「待つ」から「しがみつく」に変わりかけているサインかもしれないって。

ケンゴ:同感だ。指標になるのは「相手の状態」ではなく、「自分の状態」だと思う。彼の症状の重さは君には測れない。だが、自分の生活が回っているか、眠れているか、食べられているか、笑えているか――これは自分で観察できる。自分が削られ続けているなら、それは関係の形を見直すべき時期だと判断していい。

アキ:でね、これ大事なんだけど、「区切る」って「別れる」だけじゃないんだよ。区切り方にはグラデーションがあるんだ。たとえば、「今は連絡を待たない期間にする」って自分の中で決めるのも立派な区切り。彼との関係を終わらせるんじゃなくて、自分の心の置き場所をいったん別のところに移す。

シオン:区切るという言葉には、線を引いて切り離すような響きがありますね。けれど、本来「区切る」は「区(くぎり)を入れる」――ひとつのまとまりに、呼吸の場所を作ることなのかもしれません。物語を終わらせるのではなく、章を改める。そう捉えてみると、少し息がしやすくなるはずだ。

三つの「区切り方」

サキ:具体的に、三つくらいの区切り方を一緒に見ていきましょうか。どれが正解ということではなく、自分の心がいちばん納得するものを選ぶための選択肢として。

ケンゴ:一つ目は、「期間を決めて待つ」。たとえば夏の終わりまで、あるいは年内まで、と自分の中で期限を設ける。その間は連絡が来なくても、自分から動かない。期限を過ぎたら、自分から一度だけ短い連絡をしてみる、あるいはそこで関係に区切りをつける。期限を持つことの利点は、無限に消耗しなくて済むことだ。

アキ:二つ目は、「自分から短い連絡を一度だけ送ってみる」。たとえば季節が変わった頃に、「葉桜になったね。元気にしてる?返事はいらないよ」みたいな、彼にプレッシャーを与えない一文。「返事はいらないよ」って書くのがポイント。返事を期待してないから、来なくても傷つかない。でも、彼に「忘れてないよ」って合図は届く。

サキ:三つ目は、「自分の中で関係に区切りをつける」。これは、別れを宣言するのとは違うんです。彼に何かを伝えるのではなく、自分の心の中で「私は私の人生を進める」と決めること。彼から連絡が来たら、その時の自分の気持ちで応える。来なければ、自分の道を歩く。主導権を自分の手に取り戻す区切り方です。

シオン:三つのどれを選んでも、間違いではないのかもしれません。大切なのは選んだ自分を、後から責めないこと。どの選択にも、その時のあなたなりの誠実さがあるのだから。

「見捨てることになるのでは」という恐れについて

アキ:あなたが書いてくれた「区切るとしたら、それは彼を見捨てることになるんでしょうか」っていう一文ね。これ、読んでて胸が痛かった。あなた、本当に優しい人だね。でも、ここはちゃんと言いたい。区切ることと見捨てることは違う。

ケンゴ:これは厳しい言い方になるが、聞いてほしい。恋人は、保護者ではない。君が彼の治療の責任を負う立場にはないし、負える立場でもない。彼の回復を支える主体は、彼自身と、彼の主治医と、彼の家族だ。君は彼の人生における大切な人ではあるが、彼の命綱ではない。これを混同すると、君も彼も、お互いを苦しめることになる。

サキ:もし仮に、あなたが自分を犠牲にしてずっと待ち続けて、心がぼろぼろになってから彼が戻ってきたとしたら――そのときのあなたは、彼を笑顔で迎えられるでしょうか。たぶん、難しいと思うんです。「私はこんなに我慢したのに」という気持ちが、知らないうちに溜まってしまうから。彼にとってもすり減ったあなたを見るのは、回復のさなかで一番つらいことかもしれません。

シオン:愛する人を支えたいという気持ちは尊い。けれど、自分を差し出し続けることが必ずしも相手のためになるとは限らない。あなたがあなたの生活を大切にすることは、いつか再会するかもしれない彼に、「あなたを待つ間も、私はちゃんと生きていたよ」と差し出せる、もう一つの愛のかたちではないだろうか。

もし、再びつながったとき

アキ:これは希望の話。何ヶ月か後、あるいは一年後、彼から連絡が来る可能性はあると思う。「あの時はごめん」って言葉と一緒に。そのときあなたがどう応えるかは、その時のあなたが決めること。今のあなたが、未来のあなたの選択肢を狭める必要はない。

ケンゴ:ただし、再びつながったとき確認した方がいいことが一つある。「同じことが起きたら、次はどうするか」を、二人で話せるかどうかだ。彼の症状の波は、一度きりではない可能性が高い。次に同じ状況になったとき、どう連絡を取るか、どう距離を取るか。お互いの取扱説明書を、共有できる関係に育てられるかどうか。それが関係を続けるかどうかの判断材料になる。

サキ:もし再びつながったとしても、以前と同じ「毎日のおはよう、ただいま、おやすみ」に戻すかどうかは、慎重に考えていいと思うんです。あの形が彼にとって負担になった事実は、もうわかっています。新しい二人の連絡のリズムを、ゼロから作り直すくらいのつもりでいてください。

アキ:逆に、もし連絡が来ないまま何年も過ぎていったら――そのときはあなたが、自分の幸せを選んでいい。誰の許可もいらない。彼を待たなかったあなたを責める権利は誰にもないし、あなた自身にもない。

本章の結論

本質的な結論:「待つ」と「しがみつく」を分ける物差しは、彼の状態ではなく、あなた自身の状態です。眠れているか、食べられているか、彼以外のことで笑えているか――この三つを、自分の中の信号機にしてください。
信号が黄色や赤になってきたら、関係に「区切り」を入れる時期です。区切りは、別れではありません。「期間を決めて待つ」「短い一文だけ送ってみる」「自分の中で人生を進めると決める」――どの形であれ、選んだ自分を後から責めないこと。
そして覚えておいてください。あなたは彼の命綱ではなく、彼の人生における大切な一人の人。あなたがあなたの生活を生きることは、彼を見捨てることでは決してありません。むしろそれはいつかの再会のために、あるいはいつかの別れのために、あなた自身を整えておく営みなのです。

もう一度、あなた自身へ

ここまで読んでくださってありがとうございました。彼を想う気持ちと同じくらい、ご自身のことも大切にしてください。もし夜眠れない日が続いたり、気持ちが沈んで動けなくなる日が増えてきたら、各自治体の精神保健福祉センターこころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)に、ご自身のために相談してみてください。「彼の話」ではなく「あなたの話」を誰かに聞いてもらう時間が、きっと役に立ちます。

桜の盆栽は、来年もまた花を咲かせます。葉桜の季節も、夏も、秋も、冬も、それぞれの季節をあなたの植物として大切にしてあげてください。それは彼との関係がどうなっても、あなたの手の中に残る、確かなものです。

※本記事は読み物として再構成したものであり、特定個人の心理状態を診断するものではありません。お一人で抱え込まず、信頼できる方や専門機関にもご相談ください。

よりみちナビゲーター

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