三人でいるのに二人ぶんの空気。「絶交」を選ばずに息ができる距離の保ち方

それから、季節がいくつか過ぎて

あの一通を送ってから、季節がいくつか巡った。Aさんとは月に一度くらい、思い出したようにメッセージを交わしている。海外の時差のせいで、私が送った夜にAさんが返すのは向こうの朝で、その時間差すらなんだか心地よく感じるようになった。

Bさんとは、結局あれから二度ほど会った。お揃いの財布の話も、二人だけの思い出話も、やっぱり出てきた。でも不思議と、もう胸はざわつかなかった。「ああ、Bさんはこういう形でしか、Aさんへの好きを表せない人なんだな」と、少し遠くから眺められるようになっていた。

嫌いになったわけでも、好きに戻ったわけでもない。ただ、Bさんの隣の席が前ほど狭くなくなった。それだけのことが、私にとっては大きな変化だった。

よりみちナビゲーターの対話

アキ:ねえ、最後に会えてよかった。「Bさんの隣の席が前ほど狭くなくなった」って言葉、私すごく好き。あなた、誰かを切ったわけでも、無理して仲良くしたわけでもないんだよね。ただ、自分の椅子をちょっとだけ後ろに引いて、呼吸できる隙間を作った。それだけで、同じテーブルがこんなに違って見えるんだって、私もあなたから教わった気がする。

ケンゴ:いい着地だ。最初にきみが持ち込んだのは、「絶交すべきか」という勝ち負けのある問いだった。それが今は「隣の席の広さ」の話になっている。問いそのものが変わったんだ。答えを見つけたんじゃない。問いを立て直したから、苦しさが消えた。覚えておくといい。出口が見えないときは、たいてい問いのほうが間違っている。

アキ:ケンゴさん、それ、いい言葉。……でも一個だけ。「問いが間違ってた」って言うと、最初に悩んでた自分まで間違ってたみたいに聞こえちゃう。私はあの時「絶交すべきか」で苦しんだ夜があったからこそ、ここまで来られたんだと思うんだ。遠回りも、ちゃんと道だったよ。

ケンゴ:……たしかに、そうだな。言い直そう。問いが間違っていたんじゃない。きみが歩いた分だけ、問いが育ったんだ。最初の問いは、ここに来るための入り口だった。それでいい。

シオン:……「よりみち」という言葉を、私はずっと考えていた。まっすぐな道だけが正しいなら、よりみちは無駄ということになる。だが、この方が歩いたのはまさによりみちだった。Bさんを切るか切らないか、その分かれ道の手前で立ち止まり、別の小径へそれた。そして気づけば、切るでも繋ぐでもない、第三の場所に立っていた。──道に迷ったのではない。迷ったように見えた時間が、いちばん遠くまで連れて行ってくれたのだろう。糸の端は、まだほどけてはいない。ただ、結び方が少し優しくなっただけだ。

本日の羅針盤

エピローグで残しておきたいのはたったひとつ。

この相談者の方は、最後まで「Bさんを許す」とも「Bさんと縁を切る」とも言いませんでした。そのどちらでもない場所に立ったまま、章は閉じます。
それでいいのです。人間関係の多くは白黒の決着ではなく、グレーのまま共に時間を過ごしていくものです。「結論を出さないまま、穏やかでいられる」――それ自体が、ひとつの成熟した答えなのかもしれません。

もしこの記事を読んでいるあなたが今まさに誰かとの距離に迷っているなら。切るか繋ぐかを今日決めなくて大丈夫です。まずは本当に会いたい人へ、あなたから直接一通。そこから、あなたのよりみちが始まります。

そしてもし、人との距離をめぐる悩みで気持ちが長く沈むことがあれば、信頼できる人や専門の相談窓口を頼ることも、どうか心の隅に置いておいてください。

よりみちナビゲーター

人生の岐路で立ち止まったすべての人へ。答えを「断定」せず、あなた自身が納得できる「複数の選択肢」と「視点の切り替え方」を優しくお伝えする道案内チームです。

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