手を離す日が来ても、それは失敗じゃない
あれからAさんに、直接メッセージを送ってみた。「この前は楽しかったね、元気にしてる?」――たったそれだけ。送る前は指が震えたのに、送ってしまえば呆気なかった。
翌日、Aさんから長い返信が来た。海外の暮らしの愚痴、最近覚えた料理のこと、「また三人で会いたいね」の一言。私が一人で抱えていた「三人セット」の重さを、Aさんはそんなに重く考えていなかったのかもしれない。
Bさんとは、相変わらず少し距離がある。誘いが来ても、行ける時だけ行く。会えばお揃いの財布の話も、二人だけの思い出話も、たぶんまた出てくるだろう。でも前ほど、胸は痛まない気がする。Aさんと私の線が、ちゃんと別にあると知ったから。
よりみちナビゲーターの対話
アキ:やったね。指が震えたのに送れた、その一通が全部だったと思う。返事の中に「また三人で会いたいね」ってあったの、私はすごく沁みた。あなたが一人で背負ってた「三人の重さ」、Aさんのほうは案外、軽やかに持ってたんだね。心配してたことの多くって、自分の頭の中だけで大きくなってたりするんだよ。実際に風を通したら思ったより部屋が広かった、みたいな。
ケンゴ:いい結果だ。設計どおり、関係の運用がきみの手に戻った。ここで一つだけ、長い目で言っておきたいことがある。これから先、Bさんとの距離がさらに開いていって、いつか自然に会わなくなる日が来るかもしれない。そのとき、きみは自分を責めないでほしい。友人関係には寿命の違いがある。同じ速度で年を取るわけじゃない。手を離すのは関係を粗末にしたからじゃなく、それぞれの人生が別の方向に進んだ、ただそれだけのことだ。
アキ:ケンゴさん、それ、すごく優しいこと言ってる。でも一個だけ付け足したい。「いつか手を離すかも」って、今から覚悟しなくてもいいと思うんだ。今日のこの人は、Aさんとの線をつなげた。それで十分。明日の別れまで先回りして抱えなくていい。今ある一通の温かさを、今日はちゃんと味わっていいんだよ。
ケンゴ:……それは、そのとおりだ。先回りして喪失を抱えるのは、私の悪い癖かもしれない。今日できたことを今日のものとして受け取る。きみの言うとおりだ。
シオン:……縁という字は、糸へんに彖(たん)と書く。糸の端、と読むこともできる。糸の端は一本ではない。一つの糸がほどけても、別の糸はつながっている。Bさんという糸が緩んでも、Aさんという糸は自らの手で結び直した。それでいい。そしてもし、将来Bさんとの糸が完全に切れたとしても――その糸が三人をかつて結んでいた時間まで、消えるわけではないだろう。過ぎた季節は終わったのではなく、その人の内側に畳まれていくだけだ。
自分に問いかけるロードマップ
最後に、心に置いておいてほしい問いを二つ。
ひとつ。これから先、Bさんと会ってまた胸がざわつく瞬間が来たとき。「私はもうAさんと直接つながっている」と思い出せますか。その事実があなたの逃げ場であり、お守りになります。
ふたつ。もしいつかBさんと会わなくなったとして――その時のあなたは、今のあなたを「冷たい人だった」と責めるでしょうか。たぶん、責めない。むしろ「よく自分の息のできる場所を見つけたね」とねぎらえるはずです。
本日の羅針盤
三章を通して見えてきたのは、あなたが本当に欲しかったのは「Bさんを切る決断」ではなく、「Aさんとの縁を自分の手で確かに持っている」安心だった、ということです。それはもう、手に入りました。
アキは「今ある一通の温かさを、今日のものとして味わっていい」と言い、ケンゴは「いつか手を離す日が来ても、それは失敗じゃない」と長い目を添え、シオンは「ほどけた糸も、結び直した糸も、過ぎた季節も、すべてあなたの中に残る」と見送りました。
結論を一つにはまとめません。Bさんと半分開けた戸を保ち続けるのか、いつか静かに手を離すのか――それはこれからのあなたとBさんの時間が、ゆっくり決めていくことです。どちらを選んでも、あなたはもう誰かを経由しなくてもAさんに会える。その自由を手にした時点で、悩みの一番つらい部分はすでに過ぎています。
長く付き合った相手との距離をどう測るかは、誰にとっても難しいものです。もし今後、人間関係の悩みで気持ちが長く沈むようなことがあれば、信頼できる人や専門の相談窓口に話してみることもどうか覚えておいてください。あなたの選択は、もう間違っていません。



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