もしかしたら鬱かもしれない
付き合って五ヶ月。少し遠いところに住んでいる彼と、私は毎日LINEでつながっていました。「おはよう」「ただいま」「おやすみ」。彼が「ただいまも欲しい」と言ってくれたから、私も自然に返していたんです。それが負担だなんて、思ったこともなかった。
三月の終わり、彼が「もしかしたら鬱かもしれない。先週から薬を飲んでる」と打ち明けてきました。眠れない、ちょっとしたことでイライラしてしまう、と。
私は驚いたけれど、支えたいと思いました。四月の半ばには「症状が悪化してるから治療に専念したい」と言われたものの、その後もLINEは普通に届いていたし、彼の誘いで一緒に出かけもしました。久しぶりに笑った彼の顔を、まだ覚えています。
でも、その二日後でした。「とうぶんLINEしないで。返さなきゃって迫られてる気がするしストレスなんだよね…」――画面を見つめたまま、私はしばらく動けませんでした。追いLINEはしませんでした。返事もしませんでした。
その二日後の朝。彼から写真が一枚届いたんです。私が前にあげた桜の盆栽。小さな枝に、ふわふわと花が咲いている。「満開になったよ」というたった一言。私は「キレイに咲いたね♪私のも満開になったよ」とだけ返しました。スタンプが一個、戻ってきました。それからもう、ずっと無言です。
私はまだ彼のことが大好きで、お付き合いを続けたい。彼は今、どんな状況なんでしょうか。私から連絡しない方がいいんでしょうか。彼には幼い頃に虐待を受けた経験と、前の恋人に裏切られた過去があります。
アキとシオン、それぞれの受け止め
アキ:読ませてもらって、まず思ったのはね――あなた、すごく丁寧に彼と接してるよ。追いLINEもしないで、満開の写真にもちゃんと「キレイだね」って返して、そこから引いた。これ、簡単じゃないんだよ。好きな人から「ストレスなんだよね」って言われたら、普通はもっと取り乱すか、説明を求めたくなるもん。あなたはそれをぐっと飲み込んだ。それだけでもう十分えらい。
シオン:桜の盆栽、というのが象徴的ですね。彼は「LINEしないで」と言いながら、自分から花の写真を送ってきた。これは矛盾ではなく、彼の中にある二つの声がそのまま現れたものではないだろうか。「近づきたい」と「近づかれると苦しい」。同じ人の中で、同時に鳴っている音なのかもしれません。
アキ:そう、それなんだよね。彼が冷たくなったわけじゃなくて、たぶん彼自身も自分の心の動きに振り回されてる最中なんだと思う。鬱の症状で「人からの好意や連絡が、責められてるみたいに感じる」って、けっこう典型的に起きることなんだよ。
あなたの「おはよう」「おやすみ」は愛情だったのに、彼の脳の中ではそれが「返さなきゃいけない宿題」に変換されちゃってる。これ、あなたが何か悪いことしたわけじゃ絶対ない。
気づきのために、少しだけ立ち止まる
アキ:ここでひとつ、自分に聞いてみてほしいことがあるんだ。「私が連絡しない方がいいか」って質問、すごく自然だよね。でも、その問いの奥にもしかしてこんな気持ちはない?――「正解を選べば、彼がまた戻ってきてくれる」っていう願い。
シオン:正しい行動を選べば、相手の心を取り戻せる。そう信じたくなるのは、愛情の深さの裏返しでしょう。けれど、人の心は操作の対象ではないのかもしれません。とくに彼のように、幼い頃「安全であるはずの場所で傷つけられた」経験を持つ人にとっては、距離の取り方そのものが生きるための呼吸法なのではないだろうか。
アキ:彼が「LINEしないで」って言ったのは、あなたを嫌いになったからじゃなくて、自分を守るための精一杯の言葉だったんだと思う。そして桜の写真を送ってきたのは、「でも、つながっていたい」っていう、これも本心。どっちも本物。彼の中で、両方が同時に起きてる。
そして、ここからどうするか
本質的な結論:今、あなたがすべきなのは「連絡する/しない」の二択を急いで決めることではなく、彼が出した「LINEしないで」という言葉を、そのまま尊重して待つことです。彼から桜の写真が来たときにあなたがしたように――短く、温かく、追わずに返す。その距離感がすでに正解でした。
次に彼から何かが届いたら、また同じように。届かなければ、こちらからは送らない。これは「愛情を引っ込めること」ではなく、「彼のペースを信じること」です。あなたの愛は沈黙の時間にも、ちゃんと存在し続けています。
そして、もうひとつ大切なこと。彼を支えたいという気持ちは尊いけれど、あなた自身の心が痩せ細ってしまっては元も子もありません。彼の回復を待つ時間は、あなたが自分の生活を取り戻す時間でもあるのです。
専門機関への案内
彼の状態について、ご家族や主治医ではないあなたが診断的な判断を下す必要はありません。もし不安が強くなったりご自身の心も疲れてきたと感じたら、各自治体の精神保健福祉センターやこころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)など、公的な相談窓口を利用することもご検討ください。支える側にも、支えが必要です。
※本記事は読み物として再構成したものであり、特定個人の症状を診断するものではありません。



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