終章 ― 夢に礼を言って、目を覚ます
器を用意して、注ぐ日は心に任せる。その言葉を私は何度も心の中でなぞりました。そうしているうちに、ある夜、不思議と穏やかな気持ちになったんです。
私はずっと、夢が怖いと思っていました。二度続けて見ると当たってしまう、その的中が怖いと。でも、本当はそうじゃなかった。私が怖かったのは夢が当たることではなくて、当たったあとも何もしない自分の姿だったんです。夢はちゃんと教えてくれていた。あなたはまだこの人を手放していないよ、と。それなのに私は、知らせを受け取るだけ受け取って、ずっと部屋の隅に座っていました。
よりみちナビゲーターの対話
サキ:いい顔をされていますね。なんだか肩のあたりの力が、少し抜けたように見えます。
シオン:夢を怖がるのをやめ、夢に耳を傾けるようになった。それは夢との関係が変わったということだ。怖い知らせを運ぶ者から自分の心を映す鏡へ。同じ夢でも、見る人の心が変われば意味が変わる。
アキ:私さ、最初のころ「夢を待つ人生になっちゃう」って心配してたじゃん。でも今はちょっと違う。この人はもう、夢に振り回される人じゃない。夢が来ても来なくても、自分で「会いたい」って決められる人になった。それってすごいことだと思う。
ケンゴ:同感だ。器はできた。あとは注ぐ日を待てばいい。だがひとつだけ、現実的なことを言っておきたい。
サキ:はい。
ケンゴ:一歩を踏み出した結果が、必ずしも望むものになるとは限らない。「お久しぶりです」と声をかけて、彼が以前のように接してくれるとは限らない。一年という時間は、彼の側にも流れている。彼には彼の生活があり、もしかするともう別の縁の中にいるかもしれない。それでも動く価値があるのか。私は、あると思う。なぜなら動いた自分は、待ち続けた自分より自分を裏切らないからだ。
アキ:……ケンゴさん、今日はちょっと優しいね。
ケンゴ:いつも優しいつもりだが。
サキ:ふふ。そうですね。私もケンゴさんの言うとおりだと思います。結果がどうであれ、動いた自分をこの方はきっと好きになれる。立ち尽くして泣いていたあの日の自分に、「今度はちゃんと前を見たよ」って報告できる。それだけで十分なんじゃないでしょうか。
シオン:縁とは、結ばれることだけを指すのではない。会えたこと。夢に二度も揺り起こされたこと。声をかけようと心を決めたこと。そのすべてが、すでに縁の形をしている。たとえこの先、彼と結ばれなかったとしても、あなたがこの一年をくぐり抜けて待つ人から選ぶ人へと変わったこと。それ自体、彼という存在があなたに残した、たしかな贈り物ではないだろうか。
アキ:いい言葉。
サキ:ええ。本当に。
シオン:夢に礼を言うといい。二度も知らせてくれてありがとう、と。礼を言えば、夢はもう怖い客ではなくなる。そしてその夜の眠りは、きっと深いだろう。
自分に問いかけるロードマップ
最後に、ゆっくりと自分に尋ねてみてください。
私はもう、夢が当たるかどうか怖がっているでしょうか。それとも夢が教えてくれた自分の気持ちと、まっすぐ向き合えているでしょうか。
もし彼との関係が思い描いたとおりに進まなかったとしても、私は「動いた自分」を抱きしめてあげられるでしょうか。
この一年で、私はどんなふうに変わったでしょうか。待つ人だった私は今、どこに立っているでしょうか。
本日の羅針盤
予知夢だったのか、偶然だったのか。その答えは最後まで出ませんでした。けれど四回の章をくぐり抜けて見えてきたのは、その問いそのものがもう重要ではなくなっていた、ということです。
夢が当たるかどうかは、空が決めることかもしれません。けれど、夢が知らせてくれた自分の気持ちにどう応えるかは、あなたが決めることです。
アキは夢に振り回されず、自分で会いたいと決められるようになったあなたを讃えました。
ケンゴは、結果がどうあれ動いた自分は自分を裏切らないと告げました。
サキは、立ち尽くした自分に「今度は前を見た」と報告できればそれでいいと結びました。
そしてシオンは結ばれることだけが縁ではなく、あなたが変わったこと自体が贈り物だと言いました。
彼との関係をどうしたいか。その答えをいますぐ一つに決める必要はありません。声をかけてもいい。かけなくてもいい。けれどもし次に夢を見たら、もう怖がらないでください。布団の中でそっと礼を言ってみてください。「教えてくれて、ありがとう」と。
そうして目を覚ましたとき、あなたはもう夢を待つ人ではありません。自分の心の声を自分の足で運んでいける人です。縁があるかどうかを夢に占ってもらう日々から、自分で縁を選び育てていく日々へ。その小さな一歩を踏み出したあなたを、四人のナビゲーターは静かに見送ります。
どうか、ご自身を急かさないでください。もし思いがあふれて眠れない夜や気持ちの整理が一人ではつらい時が訪れたら、信頼できる人や専門機関に言葉を預けることも、いつでもあなたを支える選択肢としてそこにあります。
あなたの次の一歩が、あなた自身に優しいものでありますように。



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