三人でいるはずなのに、いつも二人ぶんの空気
一年半ぶりに、三人で会った。学生時代、同じバイト先で笑い合った仲だ。私が一番下でAさんは一つ上、Bさんは二つ上。久しぶりのはずなのに、席についた瞬間からなんだか息がしづらかった。
BさんがAさんとお揃いの財布を出した。「これ、こっそり買っちゃった」と笑いながら。私が知らない二人の旅行の話、二人だけのささいな出来事を、わざわざ私の前で並べていく。海外に住むAさんへ、日本食を定期的に送っているのもたぶんBさんだ。
Aさんのことは、今でも大好きだ。でもBさんのことは、いつの間にかどうでもよくなってしまった。お見合い結婚をしてから、なんだか棘のある人になった気もする。楽しくない相手と自然に会わなくなるのは、おかしなことじゃないと思う。でも──Bさんと縁を切れば、Aさんにも会えなくなる気がして。私はどうすればいいんだろう。
よりみちナビゲーターの対話
アキ:その席についた瞬間に息がしづらくなる感じ、わかるよ。肩のあたりがすっと重くなるやつでしょ。三人なのに二人ぶんの空気がテーブルを占めてて、自分の椅子だけ少し離れてるみたいな。あなたが「Bさんがどうでもよくなった」って言うの、冷たいことだなんて全然思わない。それはずっと小さく傷ついてきた人が、もう傷つかないように心を閉じた音だよ。
ケンゴ:気持ちはわかる。ただ、一つ整理させてほしい。きみが本当に困っているのは「Bさんが嫌いになった」ことじゃない。「Bさんと縁を切るとAさんも失う」という関係の構造のほうだ。AさんとBさんは長い線でつながっている。きみはその線の外側にいて、Bさんを経由しないとAさんに届かないと感じている。だがそれは、本当にそうだろうか。Aさんの連絡先を、きみは直接持っていないのか。
アキ:ケンゴさん、それは正論だけど──いきなり「構造を見ろ」って言われても、心がまだそこに追いついてないと思う。今この人は、財布をこっそり買って見せられたあの小さな棘がまだ刺さったままなんだよ。
ケンゴ:それも一理ある。ただ、その棘を抜かないまま「Bさんと絶交」を選ぶと、結局Aさんとの縁まで巻き添えにして後で後悔する。だから順番として、まず「Aさんと自分の線」が独立して引けるかを確かめたほうがいい、と言いたいんだ。Bさんを罰するためじゃなく、きみ自身の安全のために。
シオン:……二人の言葉はどちらも嘘ではないだろう。ただ、一つ気づいたことがある。この方は「Bさんが嫌い」と何度も言いながら、その実BさんがいかにAさんを大切にしているか――お揃いの財布も海を越える日本食も――誰よりよく見ている。よく見ているからこそ、苦しいのではないだろうか。それは独占というより、Bさんなりの不器用な愛着の形なのかもしれない。それを見抜いているあなた自身も、同じくらいAさんを想っている。問題はその同じ想いが、なぜ三人を狭くしてしまうのかということではないだろうか。
自分に問いかけるロードマップ
ひとつ、立ち止まって考えてみてほしいことがあります。あなたが失いたくないのは「Aさんとの関係」でしょうか。それとも「三人で笑えていたあの頃」でしょうか。この二つは似ているようで違います。前者なら、Bさんを経由しない道を探せます。後者なら、その時間はもう過ぎたものとしてそっと胸にしまう作業が必要かもしれません。
そしてもうひとつ。「Bさんと絶交すればAさんにも会えなくなる」という確信は事実でしょうか、それとも不安が描いた地図でしょうか。試したことのない道を「通れない」と決めているとしたら、それは少しもったいない。
本日の羅針盤
この相談に、一本の正解はありません。アキは「まず傷ついた自分の気持ちを認めていい」と言い、ケンゴは「Aさんとの線を独立させてから動け」と説き、シオンは「あなたとBさんは、同じ人を愛している者同士かもしれない」と問いかけました。
どれもあなたにとっての答えになり得ます。ただ、共通して言えるのは──Bさんを「絶交するかどうか」の二択で考えるのを、いったんやめてもいいということです。距離はゼロか百ではありません。Bさんとは少しずつ間を置きながら、Aさんとは直接つながる細い道を一本だけ、自分の手で引いてみる。それだけで、息のしづらさは変わるかもしれません。
もし、こうした人間関係の悩みで気持ちが長く沈み込むようなら、信頼できる人や専門の相談窓口に話してみることもご検討ください。誰かに声を出すこと自体が、地図を描き直す一歩になります。



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