「悪いオーラ」と言われたら要注意!電話占いでの値踏みと悪質商法の手口

第二章 ――「気配」は誰のものか、そして「値踏み」の正体

電話を切ったあと、私は畳の上に座り込んだまましばらく動けなかった。猫が膝に乗ってきていつものように喉を鳴らす。その重みと温もりだけが、その夜たしかなものだった。

私は考えた。あの女性は「気の巡りが濁っている」と言った。だが、濁っているのはむしろ通話のあと私の胸に残った、この澱(おり)のような感覚のほうではないか。占ってもらう前の私はたしかに不安ではあったが、これほど「自分には隠すべき汚れがある」とは思っていなかった。彼女と話したことで私は初めて、「自分の過去には人に言えない何かがあるのかもしれない」という気分にさせられた。

それに気づいたとき、背筋がひやりとした。私は何も打ち明けていない。なのに打ち明けるべき「後ろ暗いもの」があるという前提だけを、いつの間にか受け取らされていた。

よりみちナビゲーターの対話

シオン:あなたが畳の上で気づいたこと――「占う前より、占ったあとのほうが濁っていた」。これはこの一件の核心を言い当てている。本来人の気配というものは、その人が生きてきた時間の総体としてにじみ出るものだ。あなたが半世紀、金物を売り、妻を看取り、猫と暮らしてきた――その積み重ねがあなたの気配だ。それは誰かに「悪い」と採点されるような、点数のつくものではない。

サキ:私、その「点数をつけられた」という感覚がいちばん引っかかるんです。容姿の善し悪しを聞くというのは――つまり「あなたの価値を、私が測ってあげます」という姿勢ですよね。でも、膝の上で猫が喉を鳴らしている、その温もりを感じられる人が、価値の低い人であるはずがないんです。占い師に採点される筋合いなんて、どこにもない。

ケンゴ:サキの言うとおりだ。そのうえで私はもう一歩、手口の構造を説明したい。相手が容姿や性にまつわる過去を尋ねたのは、情報を集めるためだけではない。それは羞恥を先に引き出すための質問だと私は見ている。人は恥ずかしい過去を一度でも口にした相手には、心理的な負い目を持つ。「この人に弱みを見せてしまった」と。そうやって主導権を握られると、次に「そのオーラを浄化する祈祷が必要です。三万円です」と言われたとき、断りにくくなる。すべてが逆算された設計だ。

シオン:ケンゴの言う「設計」――たしかにそこには冷たい計算がある。だが私は、あなた自身に一つ問いたい。あなたはなぜあの夜、電話をかけたのだろう。売上でも跡取りでもなく、その手前にもっと素朴な渇きがあったのではないか。

私(相談者):……たぶん誰かに、大丈夫だと言ってほしかったんだと思います。妻がいた頃は店を閉めたあと、二人で茶を飲んで今日はどうだったか話すだけで済んでいた。その相手が、いなくなった。

サキ:それです。あなたに必要だったのは「気配の採点」じゃなくて、お茶を挟んで「今日はどうだった」と聞いてくれる誰かだったんですよね。占いはその代わりになれない。少なくとも、その占いは。

自分に問いかけるロードマップ

  • 私が本当に埋めたかったのは「未来への不安」だったか、それとも「妻と分かち合っていた、あの夜の時間」だったか。
  • 「あなたには隠された汚れがある」という前提を、私はいつ、誰から受け取ったのか。それは本当に私のものか。
  • 恥ずかしい過去を尋ねられたとき、私の身体はどう反応したか。その反応(背筋のひやり)は、何を教えてくれていたか。

本日の羅針盤

気配――オーラと呼ぶなら呼んでもいい――はあなたが半世紀かけて育ててきた、あなただけのものです。それを電話の向こうの他人が「濁っている」と値踏みし、日付を切って「回復」を約束することはできません。そもそも他人の気配を勝手に採点し、恥をかかせて主導権を握る――それは占いではなく支配の技術です。

ケンゴが解き明かしたとおり羞恥を引き出す質問は、後の要求を断りにくくするための布石であることが多い。もし今後、浄化・祈祷・特別な鑑定などの名目で金銭を求められたら、それは明確な危険信号です。その場で決めず一度電話を切り、消費生活センター(消費者ホットライン「188」)にご相談ください。

あなたが本当に求めていたのは採点ではなく、対話だった。それに気づいた今、あなたはもう澱から一歩外へ出ています。膝の上の猫の重みは誰にも採点できない、あなたの生の証です。次に誰かに「今日はどうだった」と聞かれたい夜が来たら――それは占い師ではなく、生きた誰かとの間で満たすものだと、私たちは思います。

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