配属ガチャに負けた?隣の「仕事ができる人」と自分を比べて落ち込むあなたへ

よりみちナビゲーターの対話(承前)

ケンゴ: 前章で「人事業務にも削れる余地はある」と言った。抽象論で終わらせると無責任になるから、具体的に三つ挙げる。

一つ、ミスの記録だ。あなたは指摘されるたびに首が熱くなって、その場で飲み込んでいるだろう。だが、いつ・どの種類の申請で・どう間違えたか。これを一行ずつメモしておく。一か月もすればミスは散らばっているように見えて、二、三のパターンに固まっていることがわかる。人は「全部できない」と思うと固まるが、「この三つだけ」とわかると動ける。

二つ、確認の順番を決めること。交通費なら、経路、金額、期間、添付。毎回この順で見る。順番を固定するだけで、見落としは目に見えて減る。私は若い頃、書類を上から下へ気分で見ていた。それをやめて左上から時計回りと決めただけで、上司から戻される回数が半分に減った。

三つ、よくある質問の定型文だ。申請者から同じ問い合わせが来るなら、返答の型を一度作って使い回す。これがあなたにとっての「自動化」の入り口だ。彼女のやったことと、本質は変わらない。

アキ: 具体的でいいと思う。メモを取る、順番を決める。それ、明日からできるもんね。

ただ──私、さっきからずっと引っかかってることがあって。相談者さん、たぶんこの三つ、聞けば「なるほど」って思う。でも、できる人と自分を比べる癖そのものはたぶん残るよ。仕組みを整えても、隣の彼女が今日も笑ってチャット打ってたら、また石が沈む。そっちを置き去りにしたら、いつまでも追いかけっこだと思うんだよね。

ケンゴ: ……否定はしない。ただ、比べる癖は「やめよう」と思ってやめられるものじゃないだろう。むしろ、自分の手元に「先月より戻される回数が減った」という事実が積み上がったとき、人は初めて他人を見なくなる。比較から降りる出口は内省じゃなく、実績のほうにあると私は思っている。

アキ: そこ、ケンゴさんと私でたぶん一番違うところだね。私は逆だと思ってる。実績が積み上がっても、比べる癖がある人は「まだ足りない、彼女のほうが上」って、ゴールを動かし続けるの。だから先に、比べることそのものを一回手放さないと、どれだけ数字が良くなっても満たされない。私、それで一回つぶれかけたことあるから。

ケンゴ: ……そうか。それはアキの実感だな。ならば否定できない。

シオン: 二人とも、出口の場所が違うと言っている。実績の側か、内省の側か。けれど、ひとつ思うのだ。

彼女の言葉をもう一度。「完成品を見せたのに無反応だった」。彼女は、すごいと言われたかった。あなたは、できる人になりたかった。二人とも、向いている方角は違うようで、欲しかったものは案外、同じ温度ではないだろうか。誰かにちゃんと見られたい。それだけの素朴な願いかもしれない。

比べる相手はもしかすると、”敵”ではないかもしれない。

自分に問いかけるロードマップ

  • 指摘されたミスを、その場の熱さで飲み込んで終わっていないか。一行でも書き残しているか。
  • 自分の確認作業に「決まった順番」はあるか。それとも、毎回その日の気分で見ているか。
  • 「彼女と比べる癖」は、実績が積めば自然に消えると思っているか。それとも、比べること自体を一度手放す必要があると感じているか。
  • あなたが本当に欲しいのは「できる人になること」か、それとも「ちゃんと見てもらえること」か。両者は同じではない。

本日の羅針盤

ケンゴは、出口は実績の側にあると言う。ミスを記録し、順番を固定し、定型を作る。手元に小さな事実が積もったとき、人は隣を見なくなる。

アキは、出口は内省の側にあると言う。比べる癖を抱えたままでは、どれだけ数字が良くなってもゴールは逃げ続ける。だからまず、比べることそのものを手放す。

この二つは、最後まで交わらなかった。けれど、どちらが正しいかではない。あなたがどちらの言葉に体温を感じるかだ。手を動かすことで楽になる人もいれば、まず心の置き場を変えないと動けない人もいる。

そして、シオンの言葉が残る。あなたと彼女は違う方角を向いているようで、同じものを欲しがっていたのかもしれない。「ちゃんと見られたい」という願いに、上も下もない。配属ガチャという言葉で隣の人を遠ざける前に、その人もまた「無反応」に少し傷ついていたことを、思い出してみてほしい。

比べる相手としてではなく、同じ願いを持つ一人として彼女を見たとき、「すごいね、それどうやったの」と素直に聞ける日が来るかもしれない。仕組みは案外、そういうところから手渡される。

よりみちナビゲーター

人生の岐路で立ち止まったすべての人へ。答えを「断定」せず、あなた自身が納得できる「複数の選択肢」と「視点の切り替え方」を優しくお伝えする道案内チームです。

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