もう待たない。未婚の妊娠から「子どもの権利」を守る母になるロードマップ

第二章 ―― 夜の不安に、順番をつける

あの夜から、私はノートを一冊用意しました。製菓の講座のテキストの裏表紙が破れて使わなくなった、安物のリングノートです。眠れない夜に天井を見つめているくらいなら、頭の中で渦を巻いているものを片っ端から書き出してみようと思ったんです。

書いてみて、驚きました。お金のこと、彼のこと、生まれてからの生活、仕事のこと。ぐちゃぐちゃに絡まっていたはずの不安は、紙の上ではたった四つの塊だったんです。


よりみちナビゲーターの対話

サキ:このノートの話、私はとても好きなんです。不安って、頭の中にあるうちは無限に膨らむでしょう。でも紙に書き出すと「あ、四つだったんだ」って分かる。輪郭が見えた瞬間に、人は少し息ができるようになる。あなたは誰に教わるでもなく、自分でその方法にたどり着いたんですよね。

アキ:それ、めっちゃ大事。私もしんどい時、スマホのメモにとりあえず全部吐き出すもん。書くと「考えてる」から「見てる」に変わるんだよね。自分の不安を、ちょっと外側から見られるようになる。

ケンゴ:いい習慣だ。ここからはその四つの塊に優先順位をつけたい。私の考えでは、順番はこうだ。第一に「体と通院」、第二に「お金の現在地」、第三に「彼と子どもの権利」、第四に「仕事」。

サキ:……ケンゴさん、私もその順番には賛成です。ただ、一つだけ付け加えたいことがあって。

ケンゴ:どうぞ。

サキ:第一の「体と通院」の中に、こっそり「眠れているか」を入れてほしいんです。妊婦健診の数字も大事だけれど、夜にちゃんと眠れているかは健診票には載らない。でも生活の土台は、そこなんですよ。私、産前に不眠が続いた時期があって、何をやっても空回りしました。眠れないまま手続きを進めても、頭に入らないんです。

ケンゴ:……その指摘は私の盲点だった。数字に出ないものを軽く見ていたかもしれない。第一の項目は「体・通院・睡眠」と書き換えよう。

アキ:ケンゴさんが素直だと調子狂うなあ(笑)。でもさ、私が気になるのは順番の「最後」が仕事ってこと。本人、すごく仕事を焦ってるよね。「早めに探して出来る限り働く」って。気持ちはわかるんだけど、私ちょっと心配で。

サキ:そこ、私も同じです。

アキ:今、つわりがあるかもしれない体で、経験ゼロの仕事を急いで詰め込むと、たぶん体が先に折れる。仕事は産んでからでも、産休明けでも取り返せる。でも今の体は、今しかないんだよ。

ケンゴ:感情論として聞くつもりはない。むしろ生存戦略として正しい。長期で見れば、無理な就労で体を壊す方が、収入の総額は減る。私は五年後から逆算する立場だが、その五年はまず無事に産むことから始まる。仕事の優先順位を最後に置くのは、合理的だ。

サキ:ところで、ご本人の話に戻りますね。あなたが「とにかく早く働かなきゃ」と焦るのは、もしかするとお金そのものより、「彼に頼らずやっていける」という証明が欲しいからではないですか。誰かに依存しないで立っていたい、という気持ち。それはとても尊いけれど、今は両親が支えてくれている。少しだけその手を、借りていい時期なのだと思います。


自分に問いかけるロードマップ

  • 私の四つの不安にもし順番をつけるなら、本当はどれが一番先だろう。世間が「先にすべき」と言うものと、私の体が「先に助けて」と言うものは同じだろうか。
  • 「早く働かなきゃ」と焦る気持ちの奥には、何があるだろう。お金への不安か、それとも誰かに頼ることへの後ろめたさか。
  • 両親の支えを、私は「甘えている」と感じてしまっていないか。その手を借りることは弱さではなく、子どものための準備ではないだろうか。
  • ノートに書き出した不安のうち、「今日の私にまだ動かせないもの」はどれだろう。それは一度、わきに置いてもいいかもしれない。

本日の羅針盤

第二章でお伝えしたいのはたった一つです。全部を一度に背負わなくていい、ということ。

サキの視点では、最初の足場は「体・通院・睡眠」です。健診の数字に表れない眠りの質まで含めて、まず自分の土台を確かめること。

ケンゴの視点では、不安に優先順位という補助線を引くことが有効です。「体と通院」「お金の現在地」「彼と子どもの権利」「仕事」。この順で一つずつ手をつければ、四つの塊は同時に襲ってこなくなります。

アキの視点では、仕事の焦りを最後に置くことが、結果としてあなたを守ります。今の体は今しかなく、仕事は後から取り返せるからです。

あなたはすでにノートという、自分なりの羅針盤を手にしています。次の一歩は新しく始めることではなく、その四つの塊の「一番上」だけに、明日の自分の力を使うこと。残りの三つは、ノートの中で待っていてくれます。

経済面の見通しが立たず不安が強いときは、自治体の「ひとり親家庭の支援窓口」や、妊娠期から使える公的な相談制度もあります。あわせて心身の負担が大きいと感じるときは、産婦人科や母子保健の窓口へ早めに声をかけてみてください。

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