嫉妬の正体は自分の「冷たさ」? 条件で選んだ3年目の関係が変わる時

第二章 ―「好き」を疑うことを、私はいつ覚えたのか

親友に彼女ができたと聞いた最初の頃、私は素直に「よかったな」と言えていた気がします。崩れ始めたのは、彼が彼女のことを話すときの顔を見てからでした。定食屋でアジフライがどうだとか、夜勤明けに来た彼女が玄関で寝てしまっていたとか、そういう何でもない話を彼はやけに丁寧に話す。内容じゃない。彼の声が、温かいんです。

帰り道、自分のスマホを開きました。三年付き合っている相手から、その日の昼に「夕飯どうする」と一言だけ。私は「適当に食べる」と返していた。やり取りに不満はない。ただ、私の声にはあの温度がなかった。

私はいつから、人を「好き」かどうかではなく「条件が合うか」で見るようになったんだろう。考えてみれば、ずっと前からそうだった気がします。失敗したくなかった。傷つきたくなかった。条件で選べば、少なくとも勘定は合う。そう思って積み上げてきたものの上に、今の私が立っている。

よりみちナビゲーターの対話

サキ:第一章では、隣の温度がまぶしいという話でしたよね。でも今回あなたが書いてくださったのは、もっと奥のことだと思うんです。「いつから条件で人を見るようになったのか」。これ、すごく大事なところに触れている。あなたは冷たい人なんじゃなくて、どこかで一度、自分の心が動くことを自分に禁じたんじゃないですか。

アキ:それ、私もそう感じた。傷つきたくなかったって、はっきり書いてるもんね。条件で選ぶって、計算高いように見えて実はめちゃくちゃ怖がってる人のやり方なんだよ。心が動いちゃうと振り回されるから。コントロールできる範囲で恋愛しようとしてた。痛いほどわかる。

ケンゴ:二人の見立てに、私もおおむね同意する。ただひとつ、はっきりさせておきたい。「条件で選ぶ」こと自体は、決して間違いではないと私は思っている。結婚や生活の継続を考えれば、条件は現実だ。問題はこの方が、それを「悪いこと」「冷たいこと」として自分を裁いている点にある。裁きながら続けるから、苦しい。選択そのものより、選択への態度を整理すべきだ。

サキ:ケンゴさんのおっしゃること、分かります。条件を見るのは生活者として当たり前のことですよね。ただ──私が気になるのは、この方は「条件で選んだ」と言いながら本当は心のどこかで、温度のある関係を諦めきれていない。第一章の台所も、今回の彼の声の温かさも、ぜんぶそこに向いている。条件を肯定するだけでは、たぶんこの方の喉のつかえは取れないんです。

ケンゴ:……諦めきれていない、か。たしかに本当に割り切れているなら、嫉妬もしないだろうな。

アキ:ね。割り切ったフリがいちばんしんどいんだよ。

シオン:ご本人の話に戻そう──あなたは「いつから条件で見るようになったのか」と問うておられた。けれど、過去を遡って犯人を探しても心は軽くならないかもしれない。むしろ問うべきはこうではないだろうか。あの夜、彼の声が温かいとあなたは気づくことができた。冷えたと思っていた自分の感覚が、まだちゃんと温度を測れている。それは終わった話だろうか。

自分に問いかけるロードマップ

  • 私は「条件で選ぶ自分」を責めているのか、それとも「心を動かすことを怖がる自分」を責めているのか。この二つは、別のものではないか。
  • 傷つきたくなくて積み上げてきたもの。それは私を何から守ってくれて、その代わりに何を遠ざけてきたのか。
  • 親友の彼の「温かい声」に気づけたということは、私の感覚はまだ生きている。では、その感覚は今の関係の中で一度でも動いたことがあるか。
  • もし「失敗してもいい」と自分に許せたとしたら、私の選択はどこか変わるだろうか。

本日の羅針盤

あなたの嫉妬は、計算高さから来ているのではありません。むしろ逆で、心が動くことを長く自分に禁じてきた人が隣の温かさを前にして、封じたはずの感覚を思い出してしまった――その揺り戻しのように見えます。

ケンゴの視点に立てば、「条件で選ぶ」こと自体を悪と決めつける必要はありません。整えるべきは選択ではなく、選択を裁き続けるあなたの態度のほうかもしれません。
サキの視点に立てば、それでもなおあなたの中には温度のある関係への渇きが残っていて、それを無理に黙らせなくていい。

そしてシオンが指してくれたように、彼の声を「温かい」と感じ取れたあなたの感覚は、まだ死んでいません。冷えたと思い込んでいた心が、ちゃんと温度を測れている。だとすれば、れは閉じた話ではなく、これから始まる話の入口なのかもしれません。

もし、自分を責める気持ちが強く長引き、日々の生活に支障をきたすようでしたら、一人で抱えず専門のカウンセリングなど専門機関への相談もご検討ください。

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