寝言で知らない男の名前を呼ぶのは病気?夫に疑われないための「朝の作法」

深夜二時、誰かの名前を呼ぶ私の口へ

私は四十二歳、パートで書店に勤めている女です。夫と二人暮らし。悩みというのが、我ながら書いていて情けないのですが、寝言がひどいんです。それも男の人を下の名前で呼ぶらしくて。寝言は若い頃からで、学生時代の合宿でも友だちに「あんた昨日、知らない男の名前ずっと言ってたよ」と笑われました。
この前も夫に、朝ごはんの目玉焼きをひっくり返しながら「ねえ、ハルヒコって誰?」と聞かれて、味噌汁を吹きそうになりました。寝る直前まで「あなたと結婚してよかった」なんて言っていたのに。
しかも困ったことに、その名前の人、私は本当になんとも思っていないんです。会社の取引先の、話したこともほとんどない人だったり。相手に嫌な思いをさせたり、妙な疑いをかけられるのが心苦しくて。私、どこか悪いんでしょうか(笑)。これから歳を取っていくのに、なんだか心配です。

よりみちナビゲーターの対話

サキ:ふふ、目玉焼きをひっくり返しながら「ハルヒコって誰?」ですか。その朝の台所の空気、なんだか目に浮かびますね。湯気の向こうでご主人がちょっと眉を上げて、あなたは菜箸を持ったまま固まって。……大丈夫ですよ、まず言わせてください。これ、けっこうよくある話なんです。

アキ:わかるよ、それ。寝言って自分でコントロールできないから、余計にモヤっとするんだよね。しかも「なんとも思ってない人」の名前ってところが、逆にタチ悪い(笑)。好きな人なら「あー、はいはい」でとぼけて済むのに、記憶の隅っこにいた人がいきなり夜中に出てくるんだもん。

サキ:そうなんですよね。でも、そこが手がかりだと思うんです。脳って、寝ている間に一日の記憶を整理するそうで。その日ちらっと聞いた名前、レシートに書いてあった文字、テレビの隅で流れた声。そういう「意味のない断片」を、寝ている脳は平気で拾って口に乗せてしまう。つまり、好きだから呼んでいるんじゃない。むしろどうでもいいからこそ、記憶の底に無防備に転がっていたというだけかもしれません。

アキ:あー、それすごく腑に落ちる。心の奥底の本音、みたいな重たいものじゃないんだ。

シオン:……名前というのは、不思議なものだ。私たちは日中、自分の意思で言葉を選んでいると思っている。けれど眠りに落ちた口は、誰の許可も得ずに動く。あなたが呼んだのは、あなたが選んだ名前ではない。ただ通り過ぎていった音だ。それを「私の本心なのでは」と怖れるところに、あなたの誠実さがある。

サキ:シオンさんの言うこと、素敵ですね。……ただ、私、一つだけ引っかかることがあって。ハルさん――あ、勝手にそう呼ばせていただきますね――が本当に心配しているのは、寝言そのものより「ご主人にどう思われるか」のほうじゃないかと思うんです。

アキ:あ、それはあるかも。病気かどうかより、疑われるのが嫌だよね。

サキ:ええ。だから私は原因を突き止めることより、朝の台所でどう振る舞うかのほうが、ずっと生活を助けると思うんです。「ハルヒコって誰?」と聞かれたその瞬間、あなたが慌てて弁解すると、かえって怪しく見える。でも、味噌汁を吹き出しながら「知らない人!誰それ?私も会いたいわ」と笑い飛ばせたら、それだけで就寝中の言葉は朝の笑い話に変わりますよね。

シオン:……ところで、ご本人の話に戻るが。あなたは「病気だろうか」と問うた。けれど本当に聞きたかったのは、「こんな私でも、隣で眠っていていいのか」ということではなかったろうか。

自分に問いかけるロードマップ

  • 私が本当に怖いのは「寝言」そのものか。それとも「疑われて、信頼が揺らぐこと」か。
  • 呼んでいる名前は、心から大切な人か。それともその日たまたま、耳を通り過ぎた音か。
  • もしパートナーの立場だったら、相手の寝言を「浮気の証拠」と「かわいい寝ぼけ」のどちらとして受け取りたいだろう。
  • この話を深刻な秘密として抱えるのと、二人の朝の定番ネタにするのと、どちらが私の暮らしを軽くするだろう。

本日の羅針盤

寝言で誰かの名前を呼ぶこと自体は、多くの人に起こるありふれた現象で、それがそのまま心の本音を映すとは限りません。眠りの中のあなたが日中に選ばなかった無数の断片を、無責任に拾い上げているだけかもしれない。

だからサキが差し出すのは、「原因探し」より「朝の作法」です。慌てて否定するより、明るく笑い飛ばすほうが二人の信頼はむしろ厚くなる。
シオンが残した問いも、静かに効いてきます――怖いのは寝言ではなく、「こんな自分でも隣にいていいのか」という揺らぎだったのかもしれません。その答えは就寝中の言葉ではなく、昼間のあなたの誠実さが、すでに表している気がします。

なお、寝言が急に増えた、大声で暴れる、目覚めても続くなど日常に支障が出る場合は、睡眠に関わる要因が隠れていることもあります。気になるようでしたら睡眠外来など、専門機関への相談もご検討ください。

よりみちナビゲーター

人生の岐路で立ち止まったすべての人へ。答えを「断定」せず、あなた自身が納得できる「複数の選択肢」と「視点の切り替え方」を優しくお伝えする道案内チームです。

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